一連のSTAP細胞に関する騒動で一躍時の人と小保方晴子氏。記者会見では、涙を見せ、STAP細胞は在ります、と断言しました。彼女の元には、激励の手紙やサポートの申し出などが後を絶ちません。一体、彼女はどうしてこのように人を惹きつけるのでしょうか?
有力科学雑誌に掲載されたSTAP細胞の論文の筆頭著者である小保方氏は、ノーベル賞級の大発見をしたということで、また、彼女の若さや容姿が、暗くて地味な研究職といったイメージを払拭するように華やかであったことなどから、メディアがそろってカバーし、一躍時の人となりましたが、数か月もしないうちに論文に関する疑問点が次々と明るみにでて、彼女が所属する理研は記者会見を開き、陳謝して論文は撤回されるべきという見解を出しました。更に調査の結果、理研の調査委員会は、彼女は改ざんや捏造といった研究不正行為を行ったと断定しました。
他人の論文を引用無しにコピーしたり、研究ノートをちゃんとつけていなかったり、別の写真を貼り付けたりと、熟練の研究者の視点からは、小保方氏の研究姿勢は、基本的なルールを知らない、常識を逸脱した未熟なやり方だったのでしょう。
ところが、小保方氏は調査委員会の結論を不服として、不服申し立てを行います。加えて、弁護士とともに最初に書いた記者会見を行い、自分の至らなかった面を謝罪するとともに、論文の撤回を拒否し、STAP細胞は存在すると主張します。
世間は彼女の態度に驚きました。彼女を批判する人も多いものの、支持する人も後を絶ちません。小保方氏は何か人を惹きつける力があるように思えますが、なぜ彼女は支持されるのでしょうか?
次のSimon Sinekのプレゼン”How great leaders inspire action”は、人が多くの人々を惹きつける理由をよく説明しています。(ちなみに、この動画はYouTubeとTEDのサイトを合わせて2千万回近く再生されています。英文と和訳はこちらのTEDのサイトにあります。)
Simonは、成功した人や企業が、なぜ他者と違うのか問いかけます。
「なぜアップルは革新的なのか?」
「なぜキング牧師は人権運動を主導したのか?」
「なぜライト兄弟は人類初動力飛行に成功したのか?」
これらの企業や人は、他者と同じ環境にいたのに、もしくは、他者よりも悪い環境にいたのに、偉大な業績を残しました。何が他者と違うのか?
Simonは “Golden Circle”というコンセプトを用いて説明します。”Golden Circle”は3つの同心円で、最も外側の円がWhat、次の内側の円がHow、最も内側の円がWhyです。Simonは、あなたが何を(What)、どのように(How)するのかではなく、最も内側のなぜ(Why)するのかが人々を惹きつけるのだというのです。
なぜアップルはコンピュータを作るのか?
常に、既成概念に挑戦し、新しいアイデアを考え出すという信念があるから。
もっと経済的に恵まれていた競争相手がいたにもかかわらず、なぜ、ライト兄弟は人類初動力飛行に成功したのか?
彼らは、飛行機の発明は、世界の未来を変えると信じていたから。
なぜ、キング牧師は人権運動を主導したのか?
彼は、何が変わるべきか、どのように変わるべきかを説いて回りませんでした。自分の信念を説いて回ったのです。なぜ、自分はこの運動しているのか。彼の信念に共感した者は、彼の信念を皆に説いて回り、それが何重にも連鎖して結果的に多くの人の共感を得ることができました。
このように、人々は行為・対象(What)や、手段(How)に惹かれるのではなく、信念(Why)に惹きつけられるのです。
小保方氏の場合、STAP細胞 (What) の論文を発表し、その手法 (How) が間違っていました。手法が間違っているからSTAP細胞は、正しいのかどうか、分かりません。しかし、彼女の “Why” である「STAP細胞という再生医療技術で人の役に立つ」という信念は、一連の騒動前から一貫しているようです。だから、彼女に共感し、支持する人が後を絶たないのです。
自然科学の世界は、全ては真実が裁きます。STAP細胞は存在するのかしないのか、いずれ明らかになると思いますが、どのような形であっても、彼女が自身の強い信念を今後も活かせることが出来るとよいですね。